株主総会で株主の人はそれぞれに個性のある人が多い。今までに聞いた質問の中で、「あれ?なんだか変だな」と疑問を感じた質問を「変な総会発言」として取り上げています。私個人の基準ですので、あしからず。

株主優待侍:変な総会発言(1)
株主優待侍:変な総会発言(2)


Q. 会社四季報を見ると、この会社は中間配当を出すことになっているが、今期は中間配当がなかった。どうなっているんだ。だまされた。
A. まだ十分な配当を行えるだけの利益がないため、配当を行っていません。申し訳ありません。


どうも筋違いな怒りをぶつけることが可能そうな人に向かってぶつける人が多いようで。会社も迷惑な話です。そういう問題は東洋経済新報社に直接ぶつけていただきたい。

それでこの話は終わりなんだけどちょっとだけ補足。


この質問があったのはかなり前の話です。

当時この会社は巨額な累積赤字を解消するため、会社資産を売却したり資産の証券化をしたり事業を整理したりでようやく単年度黒字が出せたり出せなかったりの状態で配当が出せないでいました。だからそもそも中間配当も何年も出せていない。期末配当が出せるようになってからも中間配当復活までは長い時間がかかった。

だから本来四季報で中間配当があるかどうかを見るのならここで見ればすぐにわかったはず。

会社四季報で中間配当があるかどうかの記述


予想ではあるが、ちゃんと何月に何円権利が確定するかかかれている。

先ほどもいったように上記の質問があったのは会社四季報の記述が変わる前。以前は、中間配当がある会社の場合には決算月のかかれている横に「中配」という文字が書かれていた。この株主さんはおそらくこちらの記述だけを見て「中間配当を出すと書いている」と思い込んだのだ。
siki1
 

会社四季報では2006年4集より制度ありを示すこの「中配」の掲載を中止している(マネックス証券)。

この中配マークは中間配当制度が定款に記載されているかどうかだけで書かれたものなのだ。

配当金は2006年5月施行の会社法によると、利益剰余金の処分として定款の定めがあれば取締役会決議でいつでも出すことができるようになり、また定めがなくとも臨時株主総会の議決によりいつでも配当金を出すことが可能。なので現在では期末配当金や中間配当金の他に四半期配当金として年4回配当金を出している会社もある(ホンダやGMOインターネットなど)。

が、それ以前は定款に記載がなければ中間配当を出すことができなかった。定款は会社にとっては憲法のようなものなので、簡単に変更することができない。そのため、中間配当を行う可能性がある会社はこの定めを置いていて、だからそれがあるかないかを会社四季報では重視していた。

さらにそもそも日本で株式会社が作られた当初は会社の会計期間が6ヶ月というのが普通で、だから年2回期末配当金を支払っていた。それが1974年に商法が改正されて以後、会計期間を1年間とする会社がほとんどとなったが、そうすると今まで年2回受け取っていた株主が不満に感じるため、それを解消するために中間配当金という制度が作られた。現在でもそうだが、すべての会社が中間配当金を出すわけではなく期末一括配当の会社は多いので、中間配当制度があるかどうかを会社四季報で区別して表記していた。

だが、会社法の制定で制度の有無自体はあまり重要でなくなったので記述がなくなったのだ。

なおこの当たりの経緯が分かりやすいのは以下のブログ記事。

経営コンサルタントによる経営戦略と経営管理に効く管理会計:「決算」について(2)- 配当と決算月


旧商法(昔の会社に対する法律)では、1974年10月の改正前までは、年2回、決算することが決まっていて、株主は年2回、配当金をもらうことができました。しかし、配当金をいくらにするかは、株主総会といって、全株主が集まった会議の場で決める必要があります。

この74年時の法改正で、決算を1年間と定められた会社には、一定のルール(配当可能限度額の計算ルール)を守るなら、いちいち全株主が集まって議論しなくても、取締役会が代わりに、正式な1年ごとの決算(本決算という)の丁度真ん中の6か月たった時点(基準日という)で、「中間配当」を支払うことができるようにしました。






株主優待 ブログランキングへ