三菱UFJフィナンシャル・グループ[8306]が「株主優待制度廃止に関するお知らせ(PDF)」を出しました。


MUFGはもちろん日本人なら知らない人のない世界有数の銀行グループの持ち株会社。傘下に、三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJ証券等を持つ。そして9月末日を権利日として、ピーターラビットのオリジナル商品や金融機関での手数料割引等サービス優遇などの株主優待を実施している。

そのMUFGが優待廃止。平成28年9月末日権利、すなわち昨年の実施分にて終了。


MUFGは毎日出来高上位に常に顔を出す売買高を誇る銘柄なので、優待を廃止しようがどうしようが株価に影響するようなことはないでしょうけどやっぱりホルダーとしては悲しい。

が、ここでその廃止理由が気になる。「株主の皆さまへの公平な利益還元のあり方という観点から慎重に検討を重ねました結果」。他の企業の優待廃止時のIRでもよく見かける言葉なんだけど、「公平性」の観点で検討た場合、優待廃止以外の結論はありえない。逆に「公平性の観点から検討する」ということは検討前に廃止を決めているということ。

公平にするために、100株以上という基準から100株から100株ごと1000株以上までそれぞれ所有株数に応じて優待を提供するにしても、1万株の人はどうするのかとか50株とか端株の場合はどうなのかなど完全な公平性を確保することは不可。優待券等であれば使用できる店舗がない人、物であれば不必要な人。法人株主や海外株主の場合はなどまで考えれば公平な株主優待など言葉自体に矛盾を含んだもの。むしろ、公平でなく一部の保有株式数の少ない株主を優遇するからこそ株主優待は魅力があり、個人株主に購入を促すことが可能な制度なのだ。

だから「公平性の観点で検討」などの理由にもなっていないと思う。

そもそも企業が株主優待制度を導入する目的は
・株主数の増加
・知名度向上
・ファン株主の増加による売上向上
・株主への感謝の印
が考えられる。

東証では市場毎に上場に(または上場維持に)必要な株主数が決まっている。例えば一部では2,200人以上。そのため株主数を増やすため個人株主に魅力のある株主優待を利用することがある。当然株主数を維持するためには株主優待制度を継続する目的にも利用される。

株式公開は、会社の信用力知名度の向上に役に立つ。が、全部で4千社以上(5/8時点で東証全体では3,557社)が株式を公開している中では個人への知名度が低い会社もままある。2016年6月末日時点で株主優待制度を導入している企業数は1,296社。4千分の1より1300分の1のほうが知って貰う確率は高くなる。

消費者向け商品・サービスを扱う企業にとっては株主優待制度を通じて商品を知って貰い購入のきっかけにつなげたい。店舗・サービスを利用することで繰り返し利用して欲しいという目的を持っている企業がある。イオンやすかいらーくなどは顧客向けに積極的に株主優待制度の案内を行っており、利用頻度の増加=売上の増加へ利用している。

まれにだが、一回限りの優待を権利日を遡って実施している企業がある。優待制度を知ってから買っても間に合わない。つまり株主数の増加にはつながらない。純粋にその時点での持ってくれていた株主への感謝の表れ以外に理由が思いつかない。

そういう意味ではMUFGはそもそも株主優待制度を導入するメリットがほとんどない会社だった。

だから、見直しを検討するきっかけとして正当と言えるのは以下ではなかろうか。
・一定の役割を終えた(一部上場を達成した)
・コスト/メリットの比較(優待品の値上がり、株主数が増加しすぎた)
・優待品確保が難しくなった(農産物等でそもそも数が少ないなど)
・事業再編(優待券利用可能な事業からの撤退)
・株主還元策の見直し

「株主還元策の見直しの結果、より多くの株主に公平にするために配当金の増加を目指す」という言い方のほうがより納得感がある。

ところで株主優待制度の廃止と同時に今期の配当金予測を発表している(PDF)。中間9円、期末9円の合計18円。平成29年3月期末も前回予測と同額。つまり配当金の増加を目指してはいるが、それは将来の話であって、今回廃止した費用を配当金に回すとかそういう話ではない。もちろん、全株式数に費用をわけても1株あたり0.1円にもならないのかもしれないけど、他の企業で公平な利益還元のため株主優待制度を廃止すると言った企業はたいてい同時に増配予測を出しているだけに期待外れではある。


自社株買いで1,000億円使うので(PDF)そちらで株主還元ということかもしれないが関連性に関する発表はない。


株主優待ランキング


ヤフーファイナンス[8306]
株価:721.5円(5/15)
単元株数:100株
必要資金:72,150円
配当予測:18円(2.49%)
PER:-.-倍
PBR:0.66倍
権利確定月:9月末日

8306



株主優待の内容
1.「ピーターラビットTMオリジナルグッズ」贈呈またはMUFGが支援する社会貢献活動・団体への寄付(下記から一つを選択)
100株以上1,000株未満    a) フェイスタオル2枚セット
b) キッチンプレート、コースター2枚
c) MUFGが支援する社会貢献活動・団体への寄付
1,000株以上    d) バス&フェイスタオル各1枚セット
e) キッチンプレート、コースター2枚&ブランケット
f) MUFGが支援する社会貢献活動・団体への寄付
2.金融サービスメニュー 優待クーポン券1枚につき、下記から一つを選択
A) 投資信託購入時手数料割引(三菱東京UFJ銀行)
B) 投資信託購入時手数料割引(三菱UFJ信託銀行)
C) 外貨定期6ヵ月物金利優遇(三菱東京UFJ銀行)
D) 外貨定期6ヵ月物金利優遇(三菱UFJ信託銀行)
E) 外貨預金為替手数料割引(じぶん銀行)
F) 国内株式等売買委託手数料割引(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)
G) 国内現物株式等売買委託手数料割引(カブドットコム証券)
H) 貸金庫新規利用料割引(三菱東京UFJ銀行)
I) 外貨両替レート優遇(ワールドカレンシーショップ)
J) 遺言信託取扱手数料(新規作成時)割引(三菱UFJ信託銀行)
K) 不動産仲介ご成約特典(三菱UFJ不動産販売)
500株以上    優待クーポン券1枚
1,000株以上    優待クーポン券2枚
2,000株以上    優待クーポン券3枚