私は株主優待銘柄を中心に投資しています。その真意は株式投資で値上がり益を狙うのはかなり難しく、何度も失敗を重ねた結果、インカムゲインを狙った投資をするようになったためです。

今回は株主優待ではなくインカムゲインの主体である配当金について考ます。

優待銘柄を購入する場合でも、配当金・配当利回りについては常にチェックしてより多くの配当利回りを得られるように考えています。が、配当利回りの高さばかり追いかけていると、配当金の減額や見送りなどがあり期待を裏切られることがありました。



企業の実力に対して、高すぎる配当金を出している会社はむしろ危ないというのも真理です。配当利回りが高いのは、その企業が株主還元に積極的な場合もあるかもしれないが、逆に投資家からはそれほどの高い配当金を出さないと買えない銘柄言い換えれば、株価に見合った以上の配当金を出している会社という場合もあります。後者の場合には、過大な配当金を出し続けることはできずやがて減配・無配という事態を招くことになります。

この両者を見分けることができるような簡単な指標はないものかと考えて色々と数字をいじりまわしました。

最初に見るのは配当利回りです。これが高ければ高いほどいい……と言えればいいのですが、そうではないかもしれません。

□配当利回りとPERの関係


そこで目を付けたのはPERです。PERは日本の投資情報サイトでは通常、予測PERを使います。


PER = 株価 ÷ 1株あたりの利益(EPS)
PERは株価収益率 Price Earnings Ratioの略
EPSはEarnings Per Share(利益÷株数) 

配当利回り = 配当金 ÷ 株価

配当利回りも予測配当金を使います。配当利回りが高いとPERが低い傾向があるように見えたからです。

この二つを関係づけるため意味はないけど株価を消してみる。

配当利回り×PER = 配当金 ÷ EPS

なんだか見たことがある式だなあと思って、EPSを左に移すと

(配当利回り×PER)× EPS = 配当金

確か、

配当金 = 1株あたりの利益(EPS) × 配当性向

だったので、(配当金×PER)は配当性向になるということに気がついた。

例で考えてみる。

株価4,000円、配当金40円、EPS 135円とすると
PER = 29.63倍、配当利回り 1.00%、配当性向 29.63%

配当利回り×PER = 1% × 29.63 = 29.63%

もし配当金が2倍の80円であれば
PER = 29.63倍、配当利回り 2.00%、配当性向 59.26%

また配当金が3倍の120円であれば
PER = 29.63倍、配当利回り 3.00%、配当性向 88.89%

もし配当金が4倍の160円であれば
PER = 29.63倍、配当利回り 4.00%、配当性向 118.5%

高成長で高配当利回りの優良株にも見えるが利益以上に配当金を出している危ない会社かもしれない。

PERは12.5倍であれば、健全な配当性向50%となるEPS 320円はあることになる。

結局配当利回りやPERをいじり回すより、直接配当性向を見た方がいいわけだ。

□配当性向


日本の配当性向の平均は30%程度と言われている。


配当性向は高いからいい、低いから悪いとは一概には言えない。

多くの設備投資や製品開発、人材確保など稼いだお金を投資に回していく必要があるためスタートアップ期の成長企業は配当性向は低く場合によっては配当を行わないもある。ホリエモン時代のライブドアや10数年前までの米マイクロソフト社などは配当はせず、株主には株価上昇で報いる方針でした。

実際、市中金利が低く現金を貰ってもよい投資先がない株主は配当金を貰うよりも、その資金を稼ぐ能力を持っている企業が営業投資することで何倍も大きくしてもらったほうがいい。

逆に成熟企業は配当金を出さないで利益を内部留保しても投資先がなく銀行預金にするくらいしかない。それであれば配当金を出してくれた方が嬉しい。ということで配当性向は高くなってもいいはずだ。
※実際には成熟企業でも配当性向が低い企業が日本には多い。安定配当重視の方針もあるが別の問題。

2014年3月期から2017年3月期の携帯キャリア大手3社の配当性向を比較してみると以下のようになる。

企業名項目2014年3月期2015年3月期2016年3月期2017年3月期
ソフトバンク配当金¥40¥40¥41¥44
ソフトバンクEPS¥436.95¥562.20¥402.49¥1,287.01
ソフトバンク配当性向9.15%7.11%10.19%3.42%
KDDI配当金43.356.77085
KDDIEPS132.9158.0197.6221.7
KDDI配当性向32.58%35.89%35.43%38.34%
NTTドコモ配当金60657080
NTTドコモEPS112.1101.6141.3175.1
NTTドコモ配当性向53.52%63.98%49.54%45.69%

成熟企業のNTTドコモ[9437]は50%前後、成長企業のソフトバンクグループ[9984]は10%以下、そしてその中間のKDDI[9433]は35%前後となっている。わかりやすい典型例。

ソフトバンクは成長企業で配当性向は低いがそれでも増配を行い少しずつでも増えているのはさすがだと思う。

予測配当利回りは12/15終値時点で下記。
NTTドコモ 100円(3.72%)
KDDI 90円(3.08%)
ソフトバンク 44円(0.49%)

ソフトバンクグループは配当利回りは低いがこの10年で株価は5倍になっている。KDDIは5年で3倍(10年でも3倍)、ドコモは5年で2倍弱(10年でも同じくらい)。ソフトバンクグループは5年だと約2倍。

配当性向が低い分ソフトバンクは株主優待で個人株主の満足度を補う方針。しかも外部に資金が出ていかない自社サービス料金の値引きで年間最大約3万円の還元。KDDIは年1回3千円円相当のカタログギフトで保有株数・保有期間で最大1万円になる。が、この販売商品は自社の販売物なので額面ほどのコストはかかっていない。高い配当金と自社株買いなどで株主還元を行う方針のNTTドコモは株主優待制度はなし。

ただし配当性向が高い、あるいは100%以上だという場合でも一概に悪いとは言えない。一時的要因で利益が減っただけで問題ない場合もある。企業の方針で投資が必要になった場合には銀行借入や株式の売り出しなどで容易に資金を集められるので配当性向を高めにしているだけである場合もある。

が、配当利回りが高くとも配当性向が低ければとりあえずそれら懸念はないだろう。

ちなみに、配当性向のランキングは下記サイトで簡単に調べられる。
決算ウォッチ.com「ランキング・統計

これを見ると上位には数千%、数百%の企業がずらりとならびビックリするだけでなく自分が投資している会社名も何社かあって冷や汗が出る。

ということで結局、配当利回りやPERを見ていたらいつの間にか配当性向にいきついて結局変なことせず配当性向を見た方いいよねと分かったという話です。


ところで色々資料を探しているときに以下のページを見つけました。日本に比べて米国は配当性向が高いという話を良く聞きますが、本当にそうなのでしょうか?

吉永康樹の CFOのための読みほぐしニュース「日米配当性向比較
「米国は分布がばらついているのが特徴だ。最も多いのが無配で19%を占める。」
(日本経済新聞 2008年7月12日 15面 株主配分を考える 下)


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