上場企業の株主還元で主なものが配当金。配当政策とはその配当金に関する考え方だ。

日本大百科全書(ニッポニカ) - 配当政策
利益のうちどれだけを、いかなる時期に、どのような形で配当するかについて、企業がとる方針。

会社法では、配当金を出す場合の回数・方法・決定機関そして上限が決められているが、その制限内でどのように配当するかは会社ごとに自由に決められる。

細かいことを無視すれば、配当政策とは当期処分可能利益金を配当金と内部留保に分けることであり、配当性向あるいは内部留保率を決定することである。

■主要な配当政策


考え方は以下の二つに大別できる。
・長期安定的配当
・利益型配当政策



□長期安定的配当


利益の多い年度に配当平均積立金として内部に積み立て、利益の少ない年度にこの積立金を取り崩して配当を平均的に安定させるもの。

平成の初め頃までは多くの日本企業はこのタイプの配当政策を採用していた。電力会社やガス会社などの公共性の高い企業や株式持ち合いなどで株主からのプレッシャーが弱い企業で多い。業績が高いときに配当金を多く出すと株主は喜ぶが、業績が悪化した時に配当金を減らすと印象が悪くなる。このため、内部留保が十分大きくなり業績が悪化してもそれまでの配当金を維持できると自信が出来たときにわずかに増配する。

[9041]近鉄グループホールディングスでは、確認できる範囲で2010年から11年間1株50円の配当金を継続している。
近鉄グループ

[7481]尾家産業は、長期間1株18円の配当を出し続けていたが、2018年以降は年20円に増配し以後継続している。
尾家産業

メリットとしては、業績が景気動向の影響を受けやすい業種や企業でも毎年一定の配当金が貰えるので、安定収入として期待できる。デメリットとしては配当金がなかなか増えない。ただし、企業が毎年利益を出し続けて、内部留保が順調に積み上がっているのであれば、株価が上昇しているかもしれない。


□利益型配当政策


各期の利益に連動させて配当を変化させるもの。この場合には、配当性向の安定が重視される。このタイプの配当政策を採用している企業では、目標とする配当性向を公表していることが多い。

配当性向はその年度に企業が稼いだ利益のうち、配当金として支出する比率。

配当金総額÷税引き利益×100(%)

だが、簡便には

一株配当金÷一株利益(EPS)×100(%)

で求める。

企業が沢山稼ぐと、沢山配当金が貰えるということでわかりやすい。が、利益が減ると配当金も減ってしまう。業績が景気変動の影響を受けやすく波がある場合には配当金が安定しない。利益成長を続けている企業の場合には、年々配当金が増加していくので、こういう企業の株を買えると受け取り配当金が増えていき非常に嬉しい。

[7177]GMOフィナンシャルホールディングスは、配当性向60%目標としている。4半期ごとに配当を出し、1銭の単位までの細かな運用。
GMOFH

[4327]日本エス・エイチ・エル
日本SHL

[9433]KDDIは、配当性向50%でおおむね増配。
KDDI

連続増配企業でも、利益が増加していないで配当性向が増加しているだけの場合、配当性向の基準を発表していればいずれ配当性向を基準に合わせるため減配に追い込まれる可能性がある。高配当銘柄を探すときに、企業の配当方針と配当性向の推移を確認しておくことは大事。

※配当金推移グラフは、マネックス証券の銘柄スカウターの画面をキャプチャーしたもの。

■その他の配当政策


□当期利益以外の利益


当期利益を基準に配当性向を決めるのではなく、別の利益指標を使う場合がある。例えば、償却前利益を基準に配当割合を決める企業がある。

例えば、[6098]リクルートホールディングスは、「のれん償却前当期純利益から特別損益等の影響を控除した上で30%程度」と表明している。M&Aなどで企業買収を積極的に行う企業の場合、優良企業を買収したときに多額ののれん代が発生する。これを毎年償却していくが、償却時には現金が企業外に流失しているわけではないし、買収により企業の稼ぐ力が大きくなっているのに、利益が圧縮して見えて配当金が減少するのは株主の利益にならない。そこでそういう非経常的な変動要因を排除した利益数字を基準に配当金を出す方針を採用している。

□株主資本配当率


純資産配当率とも呼ぶ株主資本配当率(DOE)を採用する企業もある。

純資産配当率(%)=配当÷自己資本×100

または「配当性向×自己資本利益率(ROE)」でも求めることができる。

当期利益をいったん自己資本に組み入れて、その一定割合を配当金として株主還元するというもの。一応当期利益が増えると配当金も増え、当期利益が減ると配当金も減るというのは配当性向で決めるのと変わらないが、ややその変動が緩やかになるというもの。

例えば、前年期末の一株株主資本BPSが1,000円の企業があったとする。当期の一株利益が100円で配当性向が50%であれば配当金は50円になる。そして同じ企業で株主資本配当率が4.5%(1円未満切り上げ)であれば、(1,000円+100円)× 4.5% = 50円である。が、同じ企業で一株利益が0円になってしまった場合、配当性向50%の場合には配当金は0円になってしまうが、株主資本配当率は(1,000円+0円)× 4.5% = 45円である。

EPSが以下のように推移した場合の配当金の推移。このよう利益の蓄積によって配当を計算するので、利益を出し続ければ配当金は増加し、そうでなければ減っていく。が配当性向に比べて変化は緩やかになる。

年度前期末のBPS一株利益EPS株主資本配当率4.5%の一株配当金配当性向50%の場合の配当金
X¥1,000¥100¥50¥50
X+1¥1,050¥100¥52¥50
X+2¥1,098¥100¥54¥50
X+3¥1,144¥100¥56¥50
X+4¥1,188¥0¥54¥0
X+5¥1,134-¥100¥47¥0
X+6¥987-¥100¥40¥0
X+7¥847¥100¥43¥50
X+8¥904¥100¥46¥50

[8628]松井証券がこの株主資本配当率基準を掲げている。
配当性向 : 60%以上 且つ
純資産配当率(DOE) :8%以上

[4208]宇部興産もDOEを基準に採用している。
連結総還元性向30%以上およびDOE(株主資本配当率)2.5%以上


□株式額面に対する配当割合


かつて額面株式が発行されていた頃、株式額面の1割の配当を出す企業が優良企業だとと言われた時代があった。

これは株価の話ではない。以前は株式会社の株式を発行するときに、「資本の総額」=「株式の金額」×「発行済み株式数」により1株ごとの額面を決めていた。これは時代や発行体により20円、50円、500円、50000円など変化し、株券の券面に金額が書かれていた。当初は発行時にその金額と同額が払い込まれていたが、資本金以上に払い込みを要したり、上場などにより1株の金額が変化するようになると額面自体の意味が薄れ、昭和25年に商法が改正されたあとは無額面株式が発行されるようになり、最終的に平成13年の改正商法により額面株式が廃止された。

5万円額面の株式に対して、5千円の配当金を支払った場合に「1割配当」という呼び方をしていた。前記から配当利回り10%の意味ではないことはわかるだろう。上記の株主資本配当率に近い考え方であるが、仮に会社設立時に1株5万円で発行していたとしても、株主資本は10万円に増えているかもしれない。上場企業でPBR 1倍の株価がついていれば、(株主資本10万円すなわち)株価10万円になるので配当利回りは、5%である。が、PBR 2倍になっていれば配当利回りは、2.5%。DOEはいずれの場合でも5%。


□安定配当+利益配当


最近少しずつ増えているのは安定配当部分は株主への約束として実行し、業績が悪くても継続する。しかし、業績がよければ業績に連動した配当金を出す。両方のいいとこ取りをした制度。

配当政策としましては、年間35円を配当ベースとし、業績が予想や目標を上回って推移した場合には、業績連動分として追加の配当を積極的に検討することを基本方針とします。

[9602]東宝の配当金の推移を示す。安定配当がいくらか、業績連動分がいくらかを明確に示した資料は見つけられなかったが2014年2月期までは年20円を安定部分で中間5円、期末15円。2015年2月期からは年25円、2019年2月期からは年35円としているものと思われる。また期末と中間の差が大きいことから2016年2月期からは当初配当予想の半分を中間期に出すように変更したようだ。業績連動分も推測だが、配当性向がおおよそ25%前後になるようにしているものと思われる。

年度中間期末合計配当性向
2010年2月期5152047.83%
2011年2月期5152032.81%
2012年2月期5152037.9%
2013年2月期5202522.21%
2014年2月期5152026.20%
2015年2月期5202516.48%
2016年2月期12.517.53023.25%
2017年2月期12.532.54516.55%
2018年2月期12.532.54524.28%
2019年2月期17.527.54529.83%
2020年2月期17.537.55522.12%
2021年2月期17.5  

[8031]三井物産は年間80円を下限として、利益が上がればその分を配当するとしている。[8001]伊藤忠商事や[8058]三菱商事のように累進配当を宣言することで、前年の配当金を下限とする形になっている。



安定配当方針の会社でも、大きな利益が出た年度には特別配当、あるいは○周年記念配当のような形で追加の利益還元を行っていた。その変形だがより株主にコミットした現代風の配当政策と言える。

どの配当政策もそれぞれにメリットがある。特に高い配当金を出す銘柄を好む自分のような投資家は購入を検討している銘柄の配当利回りや配当性向を見るだけではなく、配当政策を確認する必要性があるだろう。