『金持ちの床屋さん』デービッド・チルトン 


ファイナンシャルプランニングの基本をわかりやすく教えてくれる入門書。

金持ち父さんのような億万長者を目指すのではなく、普通の生活者として豊かになるために実践すべき事をいくつかの分野にわたって書いている。

20代の青年が主人公。将来のことを考えお金について真剣に考えるようになったとき、昔からの知り合いの床屋さんが実は大金持ちだと言うことを知り、どのようにしてお金持ちになったのか。お金持ちになる方法を聞くために月1回通うという形式を取る。



主人公ら3人の若者がお金持ちの床屋さんの生徒となり、常連客の老人の話を交えながらファイナンシャルプランニングの講義を受けていく。若者3人は、職業性別や家族の状況などそれぞれ違う生活環境にあり、それぞれの現在の状況から質問して内容を深める。

税制や社会保険制度は訳者が日本のものに置き換えている。

その内容は簡潔で基本的なものばかり。ファイナンシャルプランニングとしては導入レベルの常識であるが、世間一般ではあまり考えられていない。基本的なものなので多くの人の共感が得られるだろう。が、具体的でより具体的な形にするのは難しい。それぞれの専門家に聞いて実践すべきというのが本書の立場。

取り上げられているのは例えば以下のようなもの。

10%貯蓄ルール。毎月の収入から残ったものを貯蓄するのではなく、給料の10%は受け取ったらすぐに別の口座へ貯蓄して残ったお金を収入だと考えてその範囲内で生活するようにする。

遺言書。残された人に苦労をかけないため。少なくても遺言書を書くべき。毎年書き換えるともっとよい。

生命保険。保険の目的をしっかり考えて無駄な保険をかけない。これはライフステージに合わせてどのような事態に備えた保険が必要なのか、またどのような事態には備える必要がないのかを明確に区分けしている。当然貯蓄型の保険は不要だし、存在しない扶養家族のことも考える必要がない。将来加入できないかもしれなから予め加入しておく保険というのも分かる人にはわかるのだが、そうではなく不安に思っている人にはやや説明不足かと思う。できれば必要な保障額から保険を決めるのではなく現在の所得から支払える保険料という視点も欲しかった。聞き役3名の立場が違っているので、いくつかのパターンについて述べられている。

老後資金として必要なものがどういうものか。

住宅購入。金持ち父さんのように持ち家を全面否定するのではなく、どういう人にはいい"投資"になるのか、どういう人は買わない方がいいのかを持ち家のメリットデメリットを上げて説明している。そしてローンに関する注意点も。ただ持ち家のローン支払額と賃貸の場合の家賃が同じくらいになるとしているが、日本ではこれは当てはまっていないので本書の記述とは合わない部分もある。当然ローン金利の水準にもよるのだけど。

節約。クレジットカードは解約しろ、家計簿をつけろ、借金はするな……ではなくもっと基本的なこと。「倹約した100円は稼いだ200円に相当する」に代表される考え方を示す。

所得税。無駄な税金を払わないで済ますことも考えた方がよいという話。

具体性に乏しいのは紙幅を考えるとやむを得ないのかもしれないが、実践上不満が残る。

10%ルールでの貯蓄は投資に回すのがよい。複利の力でこの投資は始めるのが早ければ早いほど有利だとする。が、株式などの投資は難しいので投資信託がよいという。そしてよい投資信託を選べば年率15%の利回りも難しくはないとする。だが、株式の銘柄選択が難しい人に、あまたある投資信託の銘柄選択が可能なのだろうか?もう少し具体的な選択方法の提示が欲しかった。また他の数字は日本のものに置き換えられているが、これから投資するのに年率15%利回りの投資信託などそうそう簡単なものとは思えない。

とにかくシンプルなルールの積み重ねでお金に関する考え方が身につく。2007年発売の本だが、シンプルな基本が書かれているので内容は古くなっていない。ファイナンシャルプランニング、あるいはお金に関する教育は本当に必要なの?と思っている人には是非読んで欲しい。



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