株主総会の招集通知に書かれている議案のうち、「退任取締役に対する退職慰労金贈呈の件」というのがたまにある。私はこれに対してはほぼ反対票を投じている。

典型的な例では以下のような感じだ。

本総会終結の時をもって取締役を退任する○○○○に対し,在任中の功労に報いるため,当社が定める取締役退職慰労金規定に従い,退職慰労金を贈呈いたしたいと存じます。なお,贈呈の時期,方法等は取締役会にご一任願いたいと存じます。

この議案の問題点は、いったいいくら支出されるのか議案では何もわからないこと。いくら支出するのかは言わないけど、取締役会に白紙委任してくれというもの。親が子供のお小遣いを出すのに額面の記載のない小切手を渡すのか。社長が従業員に給料を払うのに、全財産の入った金庫を開けて好きなだけ持って行きなさいというのだろうか?金額がわからないのに、自由に決めさせていいというのはまともな議案とは思えない。



会社の決めた規定に従うのだから、それほどむちゃくちゃなものではないというかもしれないが、その規定を株主が閲覧できるわけではないし、規定がわかって計算式を示せたとしてもおそらくは在任中の基本報酬額に対する倍率で決まっているのだろうからその基本報酬額がわからねければ計算すらできない。

せめて、上限金額と下限金額を示して規定ではこの範囲内の金額であり、その範囲内で取締役会で決めますというのであれば納得できるのだが、金額を一切知らせずに賛成しろというのは無茶過ぎる。

取締役報酬も必ず上限金額は明記している。取締役報酬を取締役会に白紙委任してくれという議案は見たことがない。それと同じこと。株主に責任があるのなら、最低でも上限は示して貰わないと無責任だ。

ごく稀に金額を明示していることがあり、その場合にはすべて賛成する。例えば在任期間1年なのに数億円とか非常識でない限り反対はしない。創業以来数十年主導的役割を果たした取締役の場合には百億円以上の巨額でも妥当だと思えば賛成する。が、今のところ少なすぎるなあと思ったことはあっても、高額すぎると思う議案は見たことがない。

できれば支払時期も「退職後5年以内」とか年限を区切って欲しい。そして金額が大きい場合にはちゃんと引き当てて貸借対照表に載せてもらわないと困る。例えば、下記のようなものが理想。


本総会終結の時をもって取締役を退任する○○○○に対し,在任中の功労に報いるため,当社が定める取締役退職慰労金規定に従い,退職慰労金を贈呈いたしたいと存じます。なお、規定によると、●●千万円を下限とし◎◎千万円を上限とする金額であります。贈呈の時期は、本総会終結時から△年以内とし、贈呈方法等とともに取締役会にご一任願いたいと存じます。