株主総会で議案への議決権行使をするにあたって、どういう方針で賛否を決めているかを議案別に記述する。


今回は「株主提案」。


□議案の内容


株主総会の議案は会社提出以外でも株主から提案することも可能。ただし、誰でもできるわけではない。条件があり

「6ヶ月以上前から継続して総株主の議決権の1%以上の議決権か、300個以上の議決権を持っている株主」



1%以上というのはかなり難しいが、300個以上の議決権というのは企業によってはそれほど難しいものではない。例えば、[8410]セブン銀行の株価はおよそ300円で、1単元(100株)でも3万円いかない。議決権300個というのは300単元つまり900万円。1千万円いかない。[6740]ジャパンディスプレイは、株価40円程度なので300単元は120万円。投資ファンドなどではない個人レベルでも手が届かない範囲ではない。複数株主による共同提案も可能なので敷居はそれほど高くない。

その内容だが、これまで見たことがあるものの殆どは企業の定款に環境保護や特定の事業分野への融資などを行わないなど事業を制限することを目的とする条項を追加するものがほとんどだだった。電力会社に対して原子力発電所を建設しない、現有のもの破棄するとか、銀行に対して原子力発電所への融資を行わないというのが目立った。他に、企業内で不祥事として報道された内容をもとに、報道された個人を解雇したり調査するなどを求める内容のものもあった。

会社側提案とは別に配当金を指定する議案もある。現金などを資産を多くもちながら、事業活動に投資せず、現預金のままもったり有価証券として保有している場合に、ROEの低下につながる、使わないのであれば株主に返せというのはある意味筋が通った提案である。配当方針として安定配当を基本的な考え方としており、赤字の年でも減配せずに配当するために現金をもったり、臨機応変に投資をするために自己資金を厚めにもちたいなど企業によって考え方が違うので、必ずしも現金をどの程度持つのが適当という水準はないので、このような株主提案が正しいとも間違っているとも一律には決められない。

会社提案以外の取締役選任案が提出されることもある。投資ファンドの人間を取締役会に送り込み、より細かく経営を監視したり、事業内容について具体的な提案をしようというのかも知れない。

かつて[6758]ソニーに対して株主提案として、取締役報酬の個別開示を求めるものがあり44.3%の賛成があり、限られた数の賛成しか得られず否決されることが多い株主提案の中でも異例と驚かれたことがあった。これなどは高額報酬と言われるグローバル企業の役員報酬に多くの株主が感心をもっていたことへの現れ。その後、ソニーを含めた複数の企業が役員報酬の個別開示をするように考え方を転換するきっかけとなった。

ファンド提案では事業の一部を分社化し上場する提案もある。上場利益を得たり、優良事業にのみ投資したいという思惑があるのだろう。

なお、議決権行使書の議案の賛否に印をしなかった場合には、会社提案の議案には賛成、株主提案には反対したものとみなされる。また、株主提案の議案は株主が提出した文言をそのまま掲載し、会社側の意見が併記される。通常は会社側意見は反対するように求めるもの。


□対応方針


原則として会社の業務内容を制限するような提案には反対。経営者には経営を委任しており、業績をあげて利益を株主に還元してもらうのが目的で投資している。そのために、その時々で最適なことを実行してほしい。信頼できないのであれば、別の役員を選任して臨機応変に経営してもらうのがよい。

増配提案に対しては、妥当性があれば賛成。会社の配当方針などをよく読んで検討する。単純に多ければ得だいう判断はしない。

取締役選任提案については候補者の経歴や、可能であれば過去の実績や発言内容を調べて、会社経営に資する人物であれば賛成する。

その他の提案についても企業価値向上に繋がるかどうか分かる範囲で検討して賛否を決める。一律の基準はない。が、報道などで聞いたことはあっても自分が議決権を持っている会社でその他の提案については見たことがないので、実際にどうするかはよくわからない。