今でもあるかどうか知らないが、かつて毎月分配金を出す投資信託が人気だったことがある。自分も何本か持っていた。
大昔に読んだ本の影響で、10代の頃から「不労所得で生活費の全てを賄う」ことが目標になっていた。そうすれば生活費を稼ぐために嫌な仕事をしなければならないという状況に陥らずに済む。今風の言葉でいえばFinancial Independentを実現すればRetire Earlyを実現できるということになる。もちろんFIREなんて言葉はなかったし、文字通りリタイアするようなことまでは考えていなかったはず。とにかく不労所得で最低限の生活費を確保して、それ以外の収入があれば娯楽などに充てるような予定だった気がする。
そのため、マイルストーンを決め最終的に毎月20万円の配当金収入があればよいと考えた。本来であれば資産形成期には複利の効果を最大限に活かすため、なるべく配当金(分配金)のないものに積立てていくことが効率がよいのだが、自分は結果が目にみえる形にないと長期間我慢して積み立てることができない性格だった。そのため投資信託を購入した場合でも、分配金が出るものを好んで選んでいた。毎月分配型であれば、自分が配当金生活に入るまでの達成度が目に見えてわかり投資にお金を使うモチベーションを維持することができた。言わば毎月の不労所得をKPIとして投資に取り組んでいたのだ。
少し昔の記録を探したところ2014年に日本株以外でどういう商品に投資していたかわかるものが出てきた。
商品名 | 年間分配金利回り |
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ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型) | 16.65% |
PIMCO米国ハイイールド円 | 8.43% |
PIMCO米国ハイイールド豪ドル | 12.61% |
PIMCO米国ハイイールド米ドル | 6.73% |
新光US-REITオープン | 14.71% |
DAW公益債券ファンド(Aコース) | 4.42% |
世銀債AU | 4.92% |
年間の分配金は実績で特別分配金も単純に合計している。そして投資元本に対する年間分配金の合計の割合を示したものが利回り。投資信託6本と外国債券。外債も毎月利払いのもので表面利回りを示した。
これを観ると投資信託を購入している時期もテーマ型のアクティブファンドでもなければ、今流行りのインデックスファンドでもない。新興国の高配当株、ハイイールド債、REITなど。高利回りの債券、株式とREIT。リスクの高い商品も持っているバランスを取るためか、一部なりとも公益債券のものも買っている。ハイイールド債は投資不適格の債券だが、仮にデフォルトになっても投資信託のように大量に保有していれば破綻時の影響は少なく、破綻がなければかなりの高利回りの利息が受け取れる。円建て、豪ドル建、米ドル建と通貨分散している。公益債は地方自治体や電力会社などが発行している債券で格付けは高いので利回りは期待できないが、安全性が高い。Aコースというのはよく覚えていないが為替ヘッジしているかどうかの違いだろう。為替ヘッジなしを選らんだのではないかと思う。最高で16.65%、最低でも4.42%の高利回りで、不労所得による生活がどこまで達成しているか目に見えてわかるのでかなり投資へのモチベーションを支えてくれていたと思う。
ただし2014年の1年間でUS-REITのものは1回、インカムファンドはほぼ半分の月は特別分配金を出していた。
当時の自分は特別分配金がタコ足配当だという批判には賛同していなかった。というのも、元本の払い戻しになるかどうかは普遍的な事実ではなく、投資家ごとの違いでしかないことだと。たまたま投資した時期によって決まるものでしかない。大事なのは分配金の原資。投資信託の基準価格は保有している投資対象商品の価格(株価や債権価格)と収益の内部蓄積から構成されている。それは①受け取り配当金などの収益、②投資対象商品の売却損益、③上記ふたつを積み立てた分配準備積み立て金、④追加設定口など後から購入した投資主と前からの投資主との公平性を保つための収益調整金に分割でき、これらから分配されている限りはファンドは健全であると考えていた。含み損のある個別株から配当金を受け取った時に「タコ足配当だ!」と不満を述べる株主の声を聞いたことがないのと同じこと。
※参考:知ってナットク! 収益分配金(PDF)
ただ長年保有していると「分配金は安定して出ているけど、基準価格はどんどん下がっていく」「ある日突然分配金が減少する(減配に相当)」という傾向が見られ、結局資産が減っているのに毎月一定の分配金が出ているのは長期的に見ると配当金生活にプラスではないと考えるようになった。年16%も分配金を何年も継続して出し続けられるわけはないのだから当然だ。
なぜこんなことになったのか。勝手な憶測にすぎないのだが、自分が投資していた商品が投資する対象はそもそもインカムが大きな銘柄であり分配可能財産は積み上がっていく性質のもの。その一方で投資対象そのものの価格は市場で変動している。分配金は出し続けることはできるが基準価格は下がり続ける状態もあり得る。選択した商品が悪かっただけかもしれないが、追試研究するような気持ちにはならない。
ということで毎月分配型投資信託からは順次撤退。外債も世界的な低金利時代が来て、5%前後のものは先進国通貨では発行されなくなり手持ちの債券が順次満期を迎えたことで撤退。完全て撤退は2016年になった。この頃には保有株からも毎月なんらかの配当があるし、J-REITについても銘柄分散して毎月分配金を受け取れる。なので毎月分配型投資信託に頼る必要もなくなってきた。以後は売却した資金も含めて日本株・個別株(J-REIT含む)への集中投資になっていく。