多くの投資本を読むとポートフォリオとして株式と債券をバランスよく分散投資することが重要ということが書かれている。若い時にはリスクが取れるから株式多めで、リタイア年齢が近づくと徐々に債券比率を高めていく。そしてリタイア後は債券中心のポートフォリオがよい。だが、本当にそうなのだろうか?
その理由として債券は株式に比べてリスクが低い。このため資産形成期にはリスクを大きく取れるので債券比率は低くてもよいが、年齢が上がってリタイアをする頃にはリスクを取れないので株式の比率を下げた方がよいというもの。さらに株式が下がる時には債券価格が上がる傾向があるため、株式市場が不調の時でも資産を殖やすことが可能。ということ。
だが、これらは資産規模の大きい人が資産を保全するための考え方だと思う。
そもそも資産形成期には短期的に株式相場が下がっても売却して現金化する必要がなく長期的に値上がりを期待して保有し購入を続けるのだからわざわざ資産の増加速度を落とす効果のある債券に投資しなくてもよいはず。現金が必要な場合には自らの労働により稼ぎ出した現金を使用すればいいのだし、ある程度まとまった支払いが必要というのであれば、それは現金のまま保有すればよい。将来必要となる資金を投資に回すのは、あまりよいこととは言えない。
資産形成期は短期的に保有資産が値下がりしても問題ない、リタイア時にお金を引き出す時に十分な額になっていればよい。そのためにわざわざ資産増加速度を落とすような投資商品を購入するメリットはない。
さらに株式と債券価格が逆相関というのは本当なのか?下記記事によると、逆相関関係にある時期もあるし相関関係にある時期もある。平均すれば逆相関の時期が長いが必ずしもそうではない。そして現時点では相関度は0.3と過去30年で最も高い相関関係にあるという。

さらに株式60%・債券40%のポートフォリオの過去10年間バックテスト結果では確かにリスクは低減したがリターンも減少しており投資成績としては優れているとは言えなかった。という。この10年間の経済状況がたまたまそうなってしまったというのもあるが、万能ではないということになる。
自分の経験上では保有資産のうち株式が大きく下げている時期に債券価格も下がってまったくリスクヘッジになっていない経験もある。さらに、現在国内債券の利回りは非常に低いところにあり、将来的にこれ以上金利が下がる余地がなく、金利上昇が見込まれていて債券価格は下落すると見込まれる。となると、投資する場合には外国債券になるが、外国債券には為替リスクがあり仮に外国株が下がった時に外国債券が上昇しても円高になれば円換算の外国債券価格は下がっているかもしれない。そのようなリスクを抱えていることになる。果たしてそれはリスクヘッジと言えるのだろうか?
myIndexという投資情報サイトが公開しているデータによれば過去20年実績 (2003年12月末-2023年12月末)では以下となる。
資産名 | 年率平均リターン | リスク |
---|---|---|
日本債券 | +1.1% | 2% |
日本株式 | +6.3% | 16.8% |
外国債券 | +4% | 8.5% |
外国株式 | +10.3% | 18.7% |
個人的な意見でしかないが、少なくとも資産形成期には債券への投資は必要ではない。ただし、リタイア後であればある程度資産規模が大きくなっており現金を引き出していく必要があるから資産を保全する必要がある。そのため、60:40のような(あるいはもっと安全性の高い比率で)債券を組み込んだポートフォリオにする必要があるだろう。そして、リタイア時にたまたま株式暴落が来ないとも限らないので、ある程度リタイア年齢が近づいてきた時に徐々に債券を増やしていくことは必要だろう。それがいつから債券を組み込むのか、何歳で何%が適当かは自分にはわからないが、少なくとも20代には不必要だと思う。
さらに外国債券がリスクヘッジになっているとは思えないので、資産の安全性を求めて債券投資するのであれば個人向け国債がいいのではないかと思う。変動10年であれば金利上昇による利金の増加もあるので、インフレリスクへの対応も可能だろう。
財務省「個人向け国債」
個人向け国債は「元本保証」「デフォルトリスクなし(日本国が破綻しないかぎり)」「1万円から投資可能」「途中換金での価格変動リスクなし(1年分の利金を手数料として払う)」「最低金利保証あり(0.05%)」「年12回(毎月)発行」。といいことしかない。過去の金利変動(PDF)を見ると長らく最低金利0.05%が続く時代があったが、2021年以降は徐々に金利が上昇しており発行時の金利では2023年12月の0.60%まで上昇している。2024年2月は0.40%。東洋経済オンラインに10年国債の利回りをグラフ化したものがあるので、個人向け国債そのものではないがパッと見たい人はそちらを参照。
なお以上は投資資金のほぼ100%を国内株式に振り向けている人間のポジショントークとして受け取ってください。ちなみに個人向け国債を30万円だけ保有している。これはりそな銀行のマイゲートで公共債を保有していると30万円以上で毎月20ポイントをもらえるから。個人向け国債も対象で、年240ポイント。これをnanacoに交換して240円分の買い物に使っている。つまり年利にして0.08%。ちなみに最近1年間にもらった利金は税引き後で551円、年利で0.18%。ポイントと合わせると0.26%。大手都銀の1年定期はいまだに0.0020%。10年定期でも0.2000%。年金をもらうようになったら、個人向け国債を徐々に増やしていくつもり。
□まとめ
・資産形成期には、あえて資産増加速度を落とす債券を組み込む意味がない。資産評価額が減ってもすぐに引き出す必要がなく、人的資産を使った労働所得で資産減少分を補うことが可能だから。
・資産が少ない時には、債券による資産防衛効果は薄く、現金保有量を多くすれば補える。
・債券が株式と逆相関であるとは限らない。