脚本・監督:フェリックス・チョン
主演:トニー・レオン、アンディ・ラウ
現地公開:2023年
日本公開:2025年1月24日
香港映画

1980年代の香港。英国統治が終了して中国返還が決まる前に香港バブル経済時代に急成長して、直後汚職スキャンダルにより崩壊した実在の香港企業の成長と没落をもとにしたフィクション。

映画のどこに面白さを見出すかは人それぞれの嗜好によるので、ここではあまり触れないが、投資詐欺・金融詐欺や投機的ビジネス、香港証券市場を舞台にしている作品は、どのくらいマネー知識を刺激してくれるかに関心を持って触れていく。なので一部、ネタバレが含まれている場合がある。




主人公はおそらく英国でビジネスに失敗し香港に無一文で流れ着き技術者として就職しようとして知り合った財閥末子と組んで詐欺的ビジネスで一気に企業を成長させる。が、お金の動きに不審をもった捜査官が粘り強く追跡して何度も逮捕起訴するが、その度に法の網を掻い潜っていくイタチごっこを描く。

主人公のビジネス手法は曖昧。金持ちの雰囲気、ビジネス交渉の雰囲気、詐欺の雰囲気、投機マネーの狂乱の雰囲気はとてもよく描けているが、すべて曖昧な雰囲気だけで、直接詳細なビジネスや金の動きは描かれてないので多いに不満。ドラマを楽しみたい観客に複雑なビジネスの話をして退屈させないで、それっぽい雰囲気だけ体感させようということなんだろう。が、投資好きの観客には巨大金融詐欺と謳いながら、その詳細が描かれないので期待はずれ。

描かれている詐欺手法で分かるものは大きく二種類。一つ目は、不動産売買などにおいてより高値で買いたい客が他にいるかに見せかけることで、買い手に簡単に短期で利益を上げられるように誤認させ売り抜ける手法。これは被害者が実際に損をして主人公に怒りを感じる者もいる。もう一つは、あたかも成長するビジネスを持っているかのように噂を流して、自社の株価を上げて取引相手への支払いに自社株を使うことで現金を支払わずに済ませる方法。風説により株価を釣り上げて、それで資金を調達する手法は今でも公然と実行されているのをよく見かけるが、それで逮捕はまで進むことはほとんどないようだ。

他にも1.01倍の原理とか、オークション詐欺らしきものもあったが、具体的にどういう手法なのかはわからなかった。

さらに無一文で始まっているはずなのに初期投資の資金が突然出てきて、どうなっているんだろう?と思って見ていたら、その資金の出所が最終的な謎として解き明かされ、クライマックスに向かうものであった。最初の方に証人によって証言された嘘っぽい話のほうが面白かったのだけれども。

マネー知識度:初級

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