太田 洋 (著)
2000年代の一時期日本でも話題になった企業買収。やや様相を変えて近年ふたたびその活動が多数報じられるようになってきた。敵対的買収とはなにか、そしてその主役たるアクティビストとはいかなるもので、どういう行動をするのか。そして企業側はどのような対抗手段をとってきたのか。歴史と法律、規制など多様な面から実態に迫る。
実際に多くの敵対的買収に対抗した実績のあるビジネス法務に携わる弁護士が著者。敵対的買収とは何か?アクティビストとは何者でどういう行動をするのか。敵対的買収はどのようなものがあったのか、買収防衛策にはどのようなものがあるのか、敵対的買収やその対抗策に対して法律や規制はどう進化してきたのか、将来の展望して今起こりつつある変化。これらが実務化らしく整然と知るされている。実際に名前の聞いたことのある買収事件にも携わった人物が著者なので、もう少し生々しい事件の詳細が書かれていることを期待したが、残念ながら公開情報だけで事件をかたっているので個々の事例としては面白みは薄い。
以前から買収防衛策のポイズンピルについて、なぜ平等公正が重んじられる民主主義社会において特定の株主を差別的に扱う事が認められているのか疑問だった。本書後半部分でかかる差別的措置であっても株主の意志であり、必要性があり、相応な補償があれば認められるような厳密な取り扱いが形成されてきた歴史があることが語られている。本来株主の利益を守るために株主により選任されているはずの取締役が、意思決定する株主を自ら選択するような本末転倒な株主構成の変更を企図するような無闇矢鱈の発動は認められないことがわかった。これも一朝一夕にではなく、企業側も手探りで防衛策を実施し、それに判例が重なり、不十分な法律が整備され、事例が積み重なれ現在の形が取られている。が、村上ファンドの活躍、"ハゲタカ"ファンドが跋扈し、ニッポン放送事件などの後、多くの企業が事前通告型の買収防衛策を導入してきたが、それも近年廃止する企業が増えている。
また日本は株主の権利がおろそかにされていて、株式持ち合いなどで企業経営者が過剰に保護されているようにみなされている。それが規制緩和でM&Aが推進しやすくなり、同時に黒船来襲で株主資本主義が徐々に浸透し始めているように語られてきた。が、実際に各国の規制などを見てくると日本の株主のほうが優遇されている面もあるし、買い集め行為に対する規制が日本のほうが強いこともある一方、部分買収は日本がやりやすい(というか欧米では事実上できないようになっている)など買収者側が多くの手段を持っている面もある。買収防衛策についても日本が導入しやすい面もあれば、欧米のある国のほうが強い規制で守られていたりする面もあり、どの国が株主重視、どの国がより企業買収しにくと一概に述べることが出来ないこともわかった。
この中では最近の株主提案の乱発を見ると、株主提案権については日本も少し見直したほうがいいのではないかと思った。
また、黄金株については知っていたが種類株式で議決権の個数が違う株式があったり、保有期間が長くなると議決権個数がふえるなどの法律は初めて知った。そしてフェイスブック(メタ)やグーグル(アルファベット)のような先進企業が、このような種類株式で企業防衛がガッチリ固められているということも意外な面だった。日本でもこの議決権個数が1単元1個ではない仕組みを導入するのは面白いのではないかと思った。まあ、議決権総個数や議決権割合の計算が面倒そうではあるが。
個人投資家としてどうやって企業を見つけ、売買するという関連の書籍ばかり読んできたが、こういう本も大いに勉強になり読んでよかったと思う。










